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2017年5月30日 (火)

9 飼い犬に手を咬まれないために

飼い犬に手を咬まれないために

 

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写真は椅子の上で寝場所を取り合うジャンとマイロ。彼らは幼時から犬と人に社会化を行い、相手に怪我をさせる様な咬み方は滅多にしないので、これでも儀礼的闘争の範疇だが、牙を剥きだし、恐ろしげな唸り声を上げ、素早く咬み着き合う様子はジャックラッセルテリアを知らない人から見たら「危険な犬」のレッテルを貼られてもしかたないものだと思います。 

「飼い犬に手を咬まれる」という日本のことわざがあります。これは日頃可愛がって飼ってきた犬、信頼していた犬に手を咬まれた飼い主の衝撃的な気持ちがことわざになったものでしょう。転じて、自分の部下・後輩など、ふだんから目をかけていた相手、自分に逆らう事など思いも寄らない様な人間から、手痛い仕打ちを受けた時、恩を仇で返された様な時に、このことわざが使われます。逆の見方をすれば、飼い犬が飼い主の手を咬むことなど、本来あってはならない、というくらい、犬は飼い主に忠実であるべきと言う意識が日本人にはあるのでしょう。

しかし、ジャックラッセルテリアを飼っている方、特に子犬からこの犬種を飼った経験のある方は、彼らが文字通り、飼い主の手を情け容赦なく咬む犬になりうる事をご存じだと思います。

ここでは強い咬み癖のあるジャックラッセルテリアを飼って試行錯誤した経験から「飼い犬に手を咬まれない」様にする訓練方法を考えてみました。ジャックラッセルテリアの様に、放任飼育をすれば簡単に「咬む犬」になりがちな犬種に対する一つの対処方法としてご紹介します。

 

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写真は襲撃訓練の応用でジャックラッセルテリアのマイロに咬んでも良いロープおもちゃを見せ、モッテと命じて咬ませたところです。この「遊び」が大好きなマイロは、唸り声をあげ喜々として咬み着き、ロープをもぎ取らんばかりに首を振り回します。彼女はこうした「獲物を強く咬み仕留める能力」を含めて、獣猟犬として育種された犬の末裔なので、咬む事自体を禁止しても効果はないようです。

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ヤメ・マテの命令で不満げな様子ながら、瞬時に咬み着くのをヤメて停座待機状態になったマイロです。マイロはすでに命令で咬んでいるものを放す訓練が入っているので、おもちゃに本気で咬み着いている状態でも命令でヤメさせ、静止させる事ができます。また、手を咬むと「楽しい遊び」が終わってしまう事も学習しているので、今は手を咬む心配も無くなりました。

ジャックラッセルテリアと言う犬にしばしば酷い咬み癖が見られるのは、元々この犬種が特殊な用途のために育種された獣猟犬だからです。その用途は、イギリスの伝統行事であるキツネ狩りです。この犬種を育種した、ジョン・ラッセル牧師は、熱狂的なキツネ狩りのファンであり、それまでキツネ狩りに使われてきたフォックスハウンドやフォックステリアの能力に満足できず、理想的なキツネ狩り猟犬を目指してジャックラッセルテリアを育種したと言います。

その育種の目的は、キツネの縄張りであるキツネ穴に躊躇なく潜り込み、キツネを恐れずに襲いかかり、穴から追い出し、キツネが逃げようとしたときは、後脚に咬み着いて、ハンターが来るまで抑えておける犬だったといわれます。そういう実猟用に育種された犬種のため、ジャックラッセルテリアは、小さな身体に不似合いなほど、頑丈な顎と牙を持ち、動きも俊敏で咬み着く力も強いのが普通です。たとえばロープおもちゃに咬み着かせたマイロを持ち上げれば、そのまま数分ぶら下がっている事が出来ます。この強い顎と、頑丈な牙で本気で咬まれたら、大人でも大怪我をしてしまうでしょう。僕自身も訓練の過程でマイロに何度も咬まれ、流血を伴う怪我を負っています。

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マイロと一緒に咬み着きを制御する訓練を受けるジャン。通常は1匹ずつ行うべき訓練だが、ジャンはマイロのやることをすぐに模倣するので、この訓練も一緒に行ってみました。 

さらに、近年ペットの量販店などが行う、子犬の単独飼育による展示販売は、子犬から初期の社会化の機会を奪い、本来親兄弟との触れあいの中で学ぶ「遊び相手を強く咬んではいけない」と言う学習の機会を奪ってしまいます。

ですから、飼い始めた子犬の咬み癖が酷いと感じたら、生後3ヶ月台の内に社会性のある犬たちと取っ組み合い遊びをたくさんさせて、犬の流儀で、仲間を強く咬む事はいけない、と教えてもらう必要があります。

 

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ジャンはマズルコントロールが効くジャックラッセルテリアとしてはおとなしい犬なので、ロープを放させる時に、マズルを掴んで、そこから耳の穴に人差し指を入れたり、息を吹き込んだりして見ました。

 

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アルファオオカミにマズルを軽く咬まれて「叱られている」下位のオオカミ。飼い主との上下関係が確立している犬なら、オオカミと同じようにマズルを押さえて叱る方法も有効だが、マイロの様にアルファ気質の強い犬の場合は、マズルを掴む事そのものを受け入れないので、この方法は逆効果で、遊びに誘うサインと誤解されてしまいました。

しかし子犬時代にそうした機会を設ける事ができず、成犬になっても咬み癖が直らなかった場合は、飼い主がむやみに人間や他の犬を咬んではいけないと訓練を通じて教える事で、犬の咬み着きを制御すべきだと僕は思います。

訓練方法は色々ありますが、警察犬に教える襲撃訓練の応用で、咬むものを指定して咬み着かせる訓練を行い、次に咬んだものを放す訓練をおこない、最後に命令で咬み着こうとした犬を止める、と言う順番で行うのが良いと思います。もちろん飼い主さんご自身がそういう訓練をする自信がない時は、警察犬訓練士など専門家の助言を受けることをお勧めします。

一方で襲撃訓練などいれると、他人を襲う危険な犬になりかねないので、そうした訓練はしない方が良い、と言う方もいます。しかしジャックラッセルテリアの場合は、元々大半の犬が放っておいても、他の犬やよその人を攻撃しやすい傾向があるので、それを制御して他の安全を確保するのが、飼い主の勤めだと僕は思います。たとえカワイイ外観で選んだ犬であっても、自分の犬がよその犬や人に危害を与えかねないなら、それを矯正するのも飼い主の責任だと僕は思うのです。

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上の写真は、アルファにマズルを咬まれて、おとなしく「罰」を受け入れ横たわる下位のオオカミ。下はオオカミと同じ叱られ方をおとなしく受け入れて無抵抗に横たわるジャン。外観がかけ離れていても、獣猟犬とオオカミには心理面、行動面で共通点が多いと僕は考えます。ジャックラッセルテリアの訓練で行き詰まるたびにオオカミの行動観察を参考にしたのはそのためです。

僕がマイロとジャンに行った「咬み付きを制御する訓練」方法は以下の様なものでした。

 命令で咬み着かせる、命令で放させる、命令で咬みつきを止める訓練

  1. 犬に咬んで遊んでも良いロープおもちゃを生き物の様に動かして見せ、モッテと命じて咬ませ、飼い主と犬でひっぱりっこする。手を咬む危険性のある犬の場合は鉄工用手袋で手をガードする。おもちゃを無視して手を咬むようなら訓練を中止してしばらく犬を無視してから訓練を再開する。
  2. 咬み着いて所有欲が高まり、犬が本気でおもちゃを奪おうと全力で引いてきたら、おもちゃごと犬を手元に引き寄せ、ハナセ(ダセ)と命じながら、オモチャを持っていない手の平を犬の顔に向けて見せる。犬は大きく拡げた人間の手の平を、大きく口を開き牙を閃かせた犬の口のように感じオモチャを放す。
  3. あるいはもう一方の手の指を犬の耳の穴にそっと入れる。または耳に強く息を吹き込む。この時、興奮した犬に咬まれない様に注意!
  4. 犬は耳の穴を強く刺激されると、咬みついているものを反射的に放す。
  5. 犬が咬んでいるおもちゃを素直に放したら、おもちゃを隠し、ヨシヨシ・ハナセと褒め、スワレを命じ、手のひらを犬の鼻面に向けてマテと命じ、しばらく静止させ、犬が短時間でもおとなしくできたら、ヨシヨシ・マテと褒めながらご褒美を与える。
  6. 1に戻り、再びおもちゃに咬みつかせ、しばらく遊んでから、ハナセの声符と視符で放させる事を繰り返し、ハナセといわれたら咬んでいる物を放す、と言う条件反射を作り出す。
  7. 訓練を1週間くらい繰り返すと、犬はハナセと言って犬の顔の前に手の平をかざすだけで、条件反射によってすぐに放す様になる。この訓練を毎日犬がある程度疲れるか、飽きるまで時間かけて続ける。
  8. 最後はおもちゃを見せて、咬みつこうとした時に、手を犬の頭の上にかざし、ハナセと命じ、最初から咬ませない様にする。この段階で声符はハナセからヤメに入れ替えても良い。
  9. 手をかざしてヤメと命じる→咬みつくのをやめる→飼い主に褒めてもらえる、と言う条件反射が完成すれば、他の犬と取っ組み合いをやっていても、ヤメやハナセの命令で取っ組み合いを中止して呼び戻す事もできる様になる。
  10. また、ヤメ~マテまでの訓練が完成すれば、犬が他の犬や人に咬み着きそうになる前に、ヤメで咬み着きを止め、マテで静止させる事も出来るようになる。ツケ(脚側停座)が出来る犬なら、ヤメ・ツケと命じても良い。

 

咬み着きを止めるところまで訓練が進むと、この様に犬の顔に向かって手をかざし、ジャン・ヤメと命じるだけで、咬み着く前に止める事ができる様になります。

この訓練で犬に教える事が出来るのは、モッテと言って差し出されたものは咬んでも良い事、ハナセまたはヤメと言われたら、咬んでいるものを無条件に放す事、さらに放したあとで、マテに従い、飼い主の次の命令を待つ状態で静止させ、必要なら他の犬の挑発を無視させる事です。

また散歩の途中で他の犬に敵対的に振る舞う犬の場合は、太めのリードの持ち手の下に結び目を作り、相手の犬ではなくリードを咬ませて訓練し、命令で静止させる様に訓練しても良いです。もちろん、この訓練の最終目的は襲撃を命じることではなく、襲撃の停止にある事を肝に銘じて訓練してください。

この様に、元々獲物に強く咬み着く能力を高めるために育種されたジャックラッセルテリアの様な犬の場合は、一律咬み着く事を禁止しても上手く行かないと思います。こういう、元々攻撃的な犬の場合は、咬んでも良いものをあらかじめ用意し、命令で自在に咬ませたり、放したりする事を教え、咬んではいけない状況では、命令で咬ませないと言う訓練をきちんと行う必要があると思うのです。

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以前使った写真だが、散歩の途中でスズメをしとめてしまったジャンに、ハナセと命じてスズメの所有権を放棄させたところ。すでにスズメは事切れているので、これは手遅れのケースだが、訓練次第で、自分でしとめた獲物であっても素直に放させる事は可能になります。今回紹介した訓練は、リトリーブしたゲームを飼い主に返す事にも応用可能です。-目次はこちら-

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